バーンスタイン&ニューヨーク・フィルによるブリテンの≪ピーター・グライムズ≫からの「四つの海の間奏曲」と「パッサカリア」を聴いて
バーンスタイン&ニューヨーク・フィルによるブリテンの≪ピーター・グライムズ≫からの「四つの海の間奏曲」と「パッサカリア」(1973年録音)を聴いてみました。
バーンスタイン(1918-1990)にとって最後の演奏会となった、1990年8月のボストン響とのコンサートでも採り上げられた「四つの海の間奏曲」。そのライヴが音盤化されているため、バーンスタインによる「四つの海の間奏曲」と言えば、そちらを思い浮かべる方が、圧倒的に多いことでしょう。
当盤は、それよりも17年前にセッション録音されたもの。バーンスタインが55歳になる半年ほど前の演奏、ということになります。
ここでの演奏はと言いますと、バーンスタインらしい、感興豊かなものとなっています。骨格の逞しい演奏だとも言えそう。そのために、「四つの海の間奏曲」が持っている寂寥感のようなものは薄い。
その代わりに、”あらし”でのエネルギッシュな演奏ぶりは、大いになる聞き物となっています。猛烈な勢いで嵐が吹き込んでくる、という情況がありありと目に浮かんでくる。
この”あらし”の演奏ぶりに象徴されるように、総じて、描写の巧みさを備えながらの、ダイナミックな演奏が展開されています。
更には、”夜明け”や”月光”では、克明にして明快な音楽が鳴り響いている。
「パッサカリア」は、バーンスタインにとって唯一の録音。その演奏ぶりはと言えば、”夜明け”や”月光”に相通ずるものが感じられます。そう、克明な音楽づくりとなっている。そのうえで、不気味さが備わってもいる。そんなこんなを含めて、鮮烈な演奏であると言えましょう。
壮年期のバーンスタインの魅力が詰まっている、ここでのブリテン。
あまり話題に上る機会の多くない音盤だと思えますが、広く聴いてもらいたい演奏であります。