フルニエ&マルティノン&ラムルー管によるサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番を聴いて
フルニエ&マルティノン&ラムルー管によるサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番(1960年録音)を聴いてみました。
フルニエらしい、ノーブルな演奏が展開されています。
切れ目なく演奏されながら、3つの部分で構成されている、この協奏曲。第1部では、快活にして覇気の漲った音楽が奏で上げられています。疾走感に満ちてもいる。そのまま第2部へ入ると、一転して、柔らかみを帯びている、滑らかな歌が聞こえてくる。伸びやかで、朗々としてもいる。
第3部では、第1部の主題が戻ってきて、更には、細かな音によるリズミカルな動きなどが加えられたり、愁いを帯びた曲調が現れたりもするが、軽妙であったり、しっとりとしていたりと、自在な演奏ぶりが示されてゆく。ふくよかであり、艶やかでもある。そのうえで、最後には、悠然と滑走するかのようにして、曲を結ぶ。その様は、エレガントであり、しかも、適度に輝かしくもある。
そのようなフルニエに対して、マルティノンがまた、明朗な演奏を展開してくれている。歯切れが良く、屈託がない。しかも、生命力豊かでもある。第3部に入ったところで、第1部での旋律がオーボエで奏でられる箇所などは、実にチャーミングな歌を聞かせてくれてもいる。
演奏時間で言えば20分を切るほどの、比較的規模の小さな協奏曲でありますが、聴きどころ満載の、多彩な魅力を宿した演奏が繰り広げられている。
いやはや、実に素敵な演奏であります。