トスカニーニ&フィラデルフィア管によるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて
トスカニーニ&フィラデルフィア管によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(1941年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
トスカニーニとフィラデルフィア管のコンビは、CD3枚分のセッション録音をRCAレーベルに遺しています。
これらの録音は、1941年から翌年にかけて、トスカニーニとNBC響との関係が悪化し、一時的にトスカニーニがポストを離れることとなって、フィラデルフィア管への客演が実現した、という経緯に依ります。
さて、ここでの演奏はと言いますと、トスカニーニらしい、明快で、流麗で、熱気の籠ったものとなっています。但し、熱気があると言いましても、一心不乱に熱狂している訳ではなく、理性の働きが感じられるのが素晴らしいところ。
そのうえで、歌謡性が頗る高い。音楽づくりは、強靭でありつつ、明朗でしなやかでもある。
そんなこんなによって、音楽全体が光り輝いているようにも思えます。この作品ならではの壮麗にも不足はない。
概してテンポは早く、フォルムは引き締まっていて、推進力も見事。視界良好な演奏だと言えましょう。
更に言えば、NBC響との一連の録音と比べると、より潤いのある音楽に仕上がっているようにも感じられます。ふくよかさや、弾力性が感じられもする。それらはまさに、フィラデルフィア管の体質の現れなのでありましょう。
そのうえで、トスカニーニ色とも言えそうな、明瞭でパリッとした音楽が、スケール大きく奏で上げられてゆくこととなっている。
トスカニーニとフィラデルフィア管という組合せの妙が感じられる演奏。そのうえで、作品の魅力が存分に描き上げられている。
なんとも素敵な演奏であります。