フランチェスカッティ&ミトロプーロス&ニューヨーク・フィルによるラロの≪スペイン交響曲≫を聴いて
フランチェスカッティ&ミトロプーロス&ニューヨーク・フィルによるラロの≪スペイン交響曲≫(1957年録音)を聴いてみました。
なお、かつてはよく採られていた措置ですが、第4楽章がカットされていて、4つの楽章が演奏されています。
フランチェスカッティにしてはと言いますか、かなり体当たり的な演奏となっています。とりわけ第1楽章では、弓を弦にガンガンぶつけながら、激しい演奏ぶりとなっている。そのためもあって、音楽が煽情的な色合いを見せています。そのことが、この作品に相応しい。
しかしながら、音や響きが全く汚れていないところが、さすがは美音家のフランチェスカッティだと言えましょう。それどころか、力を込めれば込めるほど、音が艶やかに輝いてゆくように思えます。そう、光沢に満ちた演奏となっている。更に言えば、品性を欠くようなこともない。
そのうえで、この作品が持っているエキゾチックな色彩感が、くっきりと描き出されている演奏が繰り広げられている。第3楽章での、ノスタルジックにして哀感に満ちた切々たる歌いぶりも見事。また、最終楽章などは、疾駆感に溢れていて、目くるめく演奏が展開されている。
ミトロプーロスによる指揮がまた、実に素晴らしい。切れ味が鋭くて、鮮烈な演奏ぶりが示されています。スケールが大きくて、ドラマティックでもある。しかも頗る煽情的で、音楽を畳みかけてゆく。ひょっとしますと、フランチェスカッティもミトロプーロスに煽られた結果、上述のような演奏ぶりとなったのではないだろうか。そんなふうにも思えてきます。
聴き応え十分で、この作品の魅力を存分に味わうことのできる、素晴らしい演奏であります。