ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるシベリウスの交響曲第4番を聴いて

今月、N響に登壇し、ブルックナーやシベリウス、ニールセン、ベートーヴェン、ブラームスを指揮することになっていたブロムシュテットでしたが、体調不良のために来日を取りやめたそうです。
今年96歳になりながら、精力的な演奏活動を続けているブロムシュテット。早く回復されて、また元気な姿を我々に見せて欲しいと、切に願うばかりであります。

スウェーデン人指揮者でありますブロムシュテットは、シベリウスやニールセン、更にはベルワルドやステンハンマルといった北欧の作曲家に深い愛情を注いでこられていると言えましょう。シベリウスについては、1990年前後に、サンフランシスコ響と交響曲全集を完成させています。
そこで、その全集の中から、交響曲第4番(1989年録音)を聴いてみました。これは、第5番とともに全集チクルスの最初の録音となったもの。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ブロムシュテットらしい、誠実な演奏ぶりの中から、凛とした音楽が鳴り響いてくる演奏となっています。キリッと引き締まっていて、かつ、生命力の豊かさを備えている演奏でもある。
この作品ならではの、緊張感の高さや、凝縮度の強さが、誇張の無い形で示された演奏だとも言えそう。虚飾の無い演奏。そのようなこともあって、造形がスッキリとしていて、実に美しい。そう、純粋なる美を秘めている音楽が鳴り響いている。
この作品は、晦渋なものだというイメージが付き纏いがちですが、整然としていて、見通しの良い音楽が展開されてもいる。
そのうえで、独特な暖かさが感じられもする。シベリウスの作品の多くは、「内に秘めた情熱」を備えていると思えます。そこへゆくと、この演奏で示されているブロムシュテットの情熱は、決して熱すぎることなく、格調の高さを伴っていると言えましょうか。その分、とても清冽でもある。それでいて、充分な逞しさを備えた演奏となっている。適度に音楽がうねってもいる。

聴き応え十分で、かつ、実にチャーミングでもある、素晴らしい演奏であります。