サヴァリッシュによるシューマンの≪ライン≫を聴いて
サヴァリッシュ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューマンの≪ライン≫(1972年録音)を聴いてみました。
N響の名誉指揮者(のちに、桂冠指揮者)を務め、更には、バイエルン国立歌劇場やフィラデルフィア管やといった、その時々にシェフを務めていたオーケストラとも幾たびも来日するなど、毎年のように我が国の指揮台に登壇していたサヴァリッシュ。日本の音楽愛好家にとても馴染みの深い指揮者であったと言えましょう。その風貌や、堅実な演奏ぶりから、「教授」と呼ばれることも多い。
30代の頃から積極的な録音活動を行い、1957年に当時最年少の33歳という若さ初登場したバイロイト音楽祭での正規ライヴ録音(1961,62年に上演された3作の録音が正規盤として発売された)も世に送り出されるなど、数多くの録音を遺してくれているサヴァリッシュ。SKDとのシューマンの交響曲全集は、サヴァリッシュが49歳になる年に制作されたものになりますが、サヴァリッシュによる音盤の中でも、とりわけ根強い人気を持っている音盤であると言えそう。
さてそれでは、ここでの≪ライン≫についての印象を綴ってゆくことに致しましょう。
この演奏を端的に表現するとしたならば、「気品に満ちたオーケストラの美音と、誠実なサヴァリッシュの音楽づくりとが融合した、魅力溢れるシューマン」というような言い方になるでしょうか。
変に力みかえったところの無い、端正な演奏が繰り広げられています。そう、分厚さを追求したような演奏ではなく、筋肉質でキリっと引き締まった演奏となっている。全編を通じて、清冽かつ晴朗な演奏が繰り広げられている。とても瑞々しくもある。
しかも、必要十分な雄大さや壮麗さが感じられもする。それは、「凛としたスケール感」と言えばよいでしょうか。決して大袈裟な表情が付けられている訳ではないのですが、充分に気宇が大きく、豊かな感興が織り込まれている。躍動感も充分。シューマン特有の「音楽の激流」のようなものも、しっかりと備わっている。
そのうえで、SKDの清潔感のある響きが、惚れ惚れするほどに美しい。そして、この演奏をチャーミングなものにしてくれている。
いやはや、実に魅力的な、そして、見事なシューマン演奏であります。