マゼール&ウィーン・フィルによるシベリウスの交響曲第5番を聴いて

マゼール&ウィーン・フィルによるシベリウスの交響曲第5番(1966年録音)を聴いてみました。

見通しがクッキリとしていて、音の粒立ちが鮮やかな、克明な演奏であります。そのうえで、冴え冴えとしていて、端正な美しさを湛えた演奏となっている。
1960年代のマゼールは、才気煥発なところがあり、しばしば鮮烈な演奏を繰り広げていましたが、この演奏では、いたずらに音楽を煽るようなことはしていない。過度にスリリングでもない。なるほど、やや速めのテンポを採りながら、テキパキと音楽を進めているものの、ガムシャラに力で押すような演奏にはなっていないのであります。
と言いつつも、華奢な演奏になっている訳ではありません。むしろ、逞しくて、恰幅の良い演奏となっている。この作品に相応しい、壮麗な雰囲気も充分。そのうえで、颯爽とした演奏ぶりが示されているのであります。輪郭線がキッチリと描き出されていて、音楽がキリっと引き締まっている。そのために、精妙な音楽となっている。そして、生き生きとした息遣いが感じられる演奏となっている。
そのようなマゼールの音楽づくりに対して、ウィーン・フィルはここでも、艶やかで潤いのある美しい響きで応えてくれている。この演奏から感じられる端正な美しさは、ウィーン・フィルに負うところが大きいようにも思えます。

聴き応え十分な、素敵な演奏であります。

なお、録音から既に半世紀以上が経っていますが、Daccaならではのクリアでキレのある音質が素晴らしく、この演奏の魅力を増幅してくれています。そして、音楽を臨場感に溢れたものにしてくれてもいる。