ジュリーニ&シカゴ響によるブルックナーの交響曲第9番を聴いて

ジュリーニ&シカゴ響(CSO)によるブルックナーの交響曲第9番(1976年12月録音)を聴いてみました。
ジュリーニ(1914-2005)が62歳のときの録音。ジュリーニは1969年からCSOの首席客演指揮者に就任しており、このコンビは1970年代の前半から、ベートーヴェンの交響曲第7番や、ベルリオーズやストラヴィンスキーの作品などをEMIに録音していましたが、1976年4月にDGに録音したマーラーの交響曲第9番を皮切りに、このブルックナー、更には、シューベルト、ドヴォルザークと、交響曲第9番の音盤を集中して制作していった。この「9番シリーズ」はいずれも充実した演奏となっていて、これらを通じて、日本の音楽愛好家のジュリーニへの注目は一気に高まったように思えます。

さて、ここでの演奏はと言えば、悠然としていて、かつ、壮大なものとなっています。全体的に遅めのテンポが採られていて、どっしりと構えた演奏ぶりとなっている。と言いつつも、ものものしく振舞っているような素振りは皆無で、実直な音楽づくりが為されていて、端正な佇まいをした演奏となっています。キリッと引き締まったフォルムをしている。凝縮度が高くもある。そのうえで、必要十分に逞しくて、この作品に相応しい気宇の大きさが備わっている。
更には、この時期の、ジュリーニの勢いのようなものが演奏に刻まれていて、全体にわたって覇気が漲っている。落ち着きのある歩調の中に、伸びやかさが感じられもする。
ところで、ジュリーニは、晩年に同曲をウィーン・フィルと再録音(1988年録音)していますが、その演奏はかなり起伏の大きなものになっていました。激しい部分は戦慄が走るほどに猛々しく、穏やかな部分は限りなく澄み切った世界が表わされていた。
そのウィーン・フィル盤と比べると、こちらのCSOとの旧盤は、凛とした音楽となっているように思えます。その分、知情のバランスがよく取れている演奏だとも言えそう。

個人的には、ジュリーニの赤裸々な音楽表現が表されているウィーン・フィル盤のほうに強く惹かれますが、このCSO盤も、この作品の魅力を堪能できる立派な演奏であると思います。