ミュンシュ&ボストン響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫を聴いて

ミュンシュ&ボストン響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫(1959年録音)を聴いてみました。

ミュンシュ節が全開な演奏だと言えましょう。すなわち、熱く燃え盛る情熱が感じられ、しかも逞しい演奏ぶりが示されている。誠に豪快でもある。
音楽が力強く驀進しています。しかも、猪突猛進型でありつつも、しなやかさに欠けていない。歌心に満ちてもいる。そのため、壮大で力強く、かつ、艶やかで豊麗な音楽となっている。曲想に応じて、メランコリックな表情を湛えていたり、優美であったりもする。そんなこんなによって、聴き手をグイグイと引っ張っていく力強さを持っていながら、充分にロマンティックな演奏が展開されています。

この交響曲は、メランコリックな憂鬱を湛えた序奏部で開始されますが、必要十分にメランコリックでありつつも、骨太で雄大に奏で上げられてゆく。しかも、序奏部が進むにつれて、音楽が内側からムクムクと膨れ上げるような音楽づくりが為されている。
主部に入ってしばらくの間は、音楽に活発な動きが加わるものの、序奏部でのメランコリックな雰囲気が継続された演奏ぶりとなっています。しかしながら、オーケストラがトゥッティで力強く奏で始めると、テンポをグングンと上げていき、沸騰するほどに熱い音楽が鳴り響くことになる。その様は嵐のようで、誠に凄絶な演奏だと言えましょう。しかも、充分にしなやかでもある。その一方で、第2主題では、テンポをガクンと落とし、一面に哀愁が漂ってくる。その隔たりの、なんと大きなこと。驚異的なまでのギアチェンジが為されています。
同様なことが、第1楽章を通じて行われてゆく。嵐のような音楽が鳴り響くかと思えば、沈静化されて憂愁の色を帯びた音楽が聞こえてくる。
第2楽章は、キビキビとしていて、かつ、力強い。緩徐楽章である第3楽章では、厳かでありつつも、骨太な演奏ぶりが展開されてゆく。最終楽章では、音楽は力強く驀進してゆく。感情が激しく高ぶっていて、雄々しくて、かつ、熱い。そして、コーダでの盛り上がりは比類のないほどに見事で、壮麗で輝かしいクライマックスが築かれている。

いやはや、興奮ものの、凄まじい演奏。
そして、なんとも見事で、抗いがたい魅力を持っている演奏であります。