ムーティ&ニュー・フィルハーモニア管によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫を聴いて


ムーティ&ニュー・フィルハーモニア管によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫(1975年録音)を聴いてみました。

ムーティが34歳のときの録音。ムーティがEMIに録音した交響曲作品としては、チャイコフスキーの≪冬の日の幻想≫が最初となるが、我が国では、当盤のほうが先に発売されています。
ちなみに、この1975年はムーティの初来日の年。ベームとの初来日を果たしたウィーン・フィルは、ベームが日本を離れた後にムーティと日本全国を周り、9回の演奏会を開いています。
(この年のベームによる演奏会は、東京のNHKホールのみで7回催されています。)

1975年のウィーン・フィル来日公演の内容

さて、その演奏はと言いますと、遅めのテンポ(第1楽章のリピートが励行されているとは言え、演奏時間は44分強を要しています)が採られながらの、どっしりと構えた演奏が展開されています。そう、若さに似合わない風格のある演奏となっている。
と言いつつも、重苦しい演奏になっている訳ではありません。むしろ、溌溂としていて、清々しい。推進力に不足はなく、覇気が漲っている。ムーティならではのダイナミズムに溢れてもいる。そして、輝かしさが備わっている。
更に言えば、伸びやかで、かつ、たっぷりとした歌心が示されている。そして、ちょっとしたフレーズの中での息遣いが生き生きとしていて、感興の豊かさを、そこここで感じさせてくれる。演奏全体から、爽やかなロマンティシズムが漂っている。
強靭でダイナミックな音楽づくりをベースとしながらも、メンデルスゾーンの音楽に相応しい「しなやかさ」や「優美さ」が備わってもいる。

ここには、今や押しも押されぬ巨匠となっているムーティの、若き日の瑞々しい快演が刻まれている音盤。
ちょくちょくレコード棚から取り出して聴いている1枚。ムーティが大好きな私にとっては、忘れることのできない音盤であります。