シャイー&ミラノ・スカラ座フィルによるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて

シャイー&ミラノ・スカラ座フィルによるメンデルスゾーンの≪イタリア≫(2021年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
ここでは、1834年改訂版が使用されています。
この版は、第1楽章こそ現行版と同じ内容ではありますが(と言うよりも、第1楽章の改訂は実現されなかった)、それ以外の楽章は、使われている主な素材は現行版と同じでありながら、随分と趣を異にした音楽となっています。そう、音楽の言い回しや、音楽の流れや接続の仕方などが、現行版とは随分と異なっている。或いは、現行版ではアルコで(弦を弓で弾いていく奏法)奏でられる箇所が、ピチカートになっていたりもする。
なお、ガーディナーがウィーン・フィルと録音した≪イタリア≫でも、現行版とともに1834年改訂版が併録されていました。
さて、ここでの演奏はと言いますと、なんとも溌溂とした音楽が奏で上げられています。とりわけ、冒頭の部分は、弾け飛ぶようにして開始されている。そして、推進力に満ちた音楽が鳴り響いてゆくこととなっている。
しかも、しなやかで伸びやかでもある。そのような演奏ぶりは、この作品に誠に相応しいと言えましょう。
更には、低音を効かせていて、力強く推し進められてゆく、といった趣がある。そのために、地力の強い演奏になっているとも言えそう。
とは言うものの、なるほど朗らかな音楽が響き渡ってはいますが、明朗であるとか、晴朗だとか、といった言い方が相応しいとは思えない。奇妙な言い方になるのですが、「翳りのある朗らかさ」と表現できそうな音楽が鳴り響いている。そのために、爽やかな音楽になっている訳ではない。
その代わりに、コクの深さのようなものが感じられる。
そのような演奏ぶりは、特に、第2楽章において顕著であります。もともとが、この楽章は哀愁に溢れた音楽となっているのですが、そのような性格が強調されていると言いたい。そして、とても翳の濃い音楽が鳴り響くこととなっている。
また、最終楽章では、激情的な性格が一層強くなることとなっている。焦燥感が強くもある。更には、改訂で改められたピチカートを強調していて、とても鮮烈な音楽に仕上げている。
そのうえで、急速楽章では、頗る生き生きとした演奏が繰り広げられているのであります。そして、そこからはやはり、溌溂とした息吹、といったものが漂ってくることとなっている。
版の選択も含めて、なんともユニークな≪イタリア≫となっています。しかも、聴き応えが十分。聴いていて、グイグイと引き込まれてゆく。
実に興味深い≪イタリア≫であります。





