ルービンシュタイン&トスカニーニ&NBC響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を聴いて

ルービンシュタイン&トスカニーニ&NBC響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(1944年録音)を聴いてみました。
このとき、ルービンシュタインは57歳、トスカニーニは77歳。

なんとも剛健な演奏であります。強靭な演奏となっている。そして、凛然としていて、厳粛さが感じられもする。
ルービンシュタインは、おおらかさを持っているピアニストだと思えますが、ここでは、凝縮度の高い演奏が繰り広げられています。彫りが深くもある。それは、演奏されているのが短調で書かれた作品だということにも依るのでしょうが、共演者がトスカニーニであるというところが大きいように思えます。
それでいて、重厚に過ぎることは全くない。気宇が大きくて、そのうえで、輝かしくもある。その様は、「壮麗」と呼ぶに相応しい。明快にして、伸びやかな音楽となってもいる。このような性格もまた、トスカニーニに依るところが大きいと言えそう。
そこに、ルービンシュタインならではの「まろやかさ」が加えられる。そして、厳粛さの向こうに、華麗な音楽世界がちらついてもいる。
トスカニーニが主導権を握っていながらも、ルービンシュタインの個性もシッカリと刻まれている演奏となっています。

ルービンシュタインとトスカニーニによるセッション録音は、これが唯一でありましょう。
とても貴重な記録でありますが、ただ単に珍しさに着目するだけでなく、この両巨匠の組合せの妙を楽しむことのできる、素敵な演奏であります。