ジュリーニ&シカゴ響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫を聴いて
ジュリーニ&シカゴ響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1976年録音)を聴いてみました。
暗鬱で、暗い色調に包まれた≪展覧会の絵≫となっています。ドッシリと構えた演奏ぶりが貫かれていて、荘重な音楽が繰り広げられているとも言えそう。
概して、足取りは重い。そして、克明に、1枚1枚の絵を描き出そうとしている。そんなふうに言える演奏となっている。
冒頭の「プロムナード」こそ、明るさや輝かしさが感じられます。展覧会を巡っていくという、期待感を盛り上げてくれている。しかしながら、続く「こびと」が始まると、一気に重苦しくなり、景色はどんよりしてくる。それは、「テュイルリーの庭」や「卵の殻をつけた雛の踊り」といった、軽妙なナンバーにおいても然り。音楽が軽やかに弾んでゆく、というふうにはならないのであります。それだけに、「ビドロ」のような、もともとが重々しさを持っているナンバーでは、その味わいが殊のほか引き立つこととなっている。「カタコンブ」では、頗る荘重な音楽が響き渡っている。
(唯一、「リモージュ」のみは、軽快で明るい色調を持った演奏ぶりが示されています。)
そのような演奏ぶりであるだけに、「ババ・ヤーガ」から「キエフの大門」にかけては、オーケストラを存分に鳴らしながらの壮大な演奏となっているにも関わらず、開放的に響くことなく、凝縮度の高い音楽が示されている。
謹厳さのようなものが前面に出ている≪展覧会の絵≫。そのようなジュリーニのアプローチをシッカリと受け止めながら、適度に重厚で、しかも巧緻な演奏ぶりで応えてゆくシカゴ響。
聴後の充実感の大きな、見事な演奏であると思います。
なお、当盤に収められているセッション録音の翌年に、ベルリン・フィルに客演して同曲を演奏したライヴ録音も音盤化されているのですが、そちらでも同様のアプローチによる、同様の質感を持った演奏が刻まれています。ジュリーニの演奏に、ブレが感じられないのであります。