ヨッフム&ロンドン・フィルによるハイドンを聴いて

昨日の投稿で触れました、コリン・デイヴィス&コンセルトヘボウ管と並んで、ハイドンの交響曲の演奏として規範となっているヨッフム&ロンドン・フィル盤。今日は、このコンビによる「ザロモン・セット」から、最後の2曲、≪太鼓連打≫と≪ロンドン≫(1972,73年録音)を聴いてみました。

C・デイヴィス盤での逞しいハイドンと比べますと、ヨッフムによるハイドンは、優しくて柔和な表情をしていると思えます。人懐こさがあって、暖かみが感じられる。その辺りが、いかにもハイドンの音楽が持っている性格に似つかわしいと言えましょう。
そのうえで、堅実で滋味に溢れている。端正で清々しい音楽世界が広がっている。更に言えば、生気があって、愉悦感に満ちてもいる。
恣意的なところが微塵も感じられない、格調の高いハイドン演奏であります。


ここで採り上げた2曲は、ともに、ハイドンの交響曲の中でも気宇の大きさにおいては最右翼に置くべきかもしれません。
そのような2曲において、例えば≪太鼓連打≫では、この作品に備わっている、一種の雄大さのようなものが巧まずして表出された演奏が繰り広げられている。一方の≪ロンドン≫では、この作品に相応しい壮麗さが過不足なく表されているように思えます。しかも、全く大袈裟な形を取らずに、ごくごく自然に。
しかも、両曲ともに、足取りは、重からず軽からず。息遣いは、伸びやかで真っすぐ。身のこなしは、しなやかで屈託がない。そんなこんなのうえで、響きは充実感がいっぱい。そのような演奏ぶりのもと、頗るチャーミングな音楽が鳴り響いていくのであります。

ハイドンを聴く歓びを存分に味わうことのできる、親しみやすくて、立派で、チャーミングな演奏であります。
もっと言えば、「ああ、素敵な音楽に触れることができた!!」という満足感を十二分に味わうことのできる、頗る魅力的な演奏であると、声を大にしてアピールしたい音盤であります。