ザンデルリンク&ベルリン響によるショスタコーヴィチの交響曲第10番を聴いて

ザンデルリンク&ベルリン響によるショスタコーヴィチの交響曲第10番(1977年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

旧東ドイツに生まれたザンデルリンクは、ドイツ音楽の巨匠というイメージが強いかと思いますが、1940年代から50年代にかけて、およそ20年間レニングラード・フィルの第一指揮者に就いていたこともあり、チャイコフスキーやラフマニノフやショスタコーヴィチといったロシア音楽も得意にしていました。或いは、シベリウスでも素晴らしい演奏を数多く聴かせてくれています。
そのようなザンデルリンクによる、ここでのショスタコーヴィチはと言いますと、ザンデルリンクらしい実に真摯な演奏が繰り広げられています。キリっとした端正な佇まいをしていて、冴え冴えとしていて、ピュアな美しさに溢れた演奏となっている。そして、頗る凝縮度の高い音楽が鳴り響いている。過度に堅苦しくならない範囲で、峻厳な演奏となっているとも言えそう。
しかも、この作品が備えているシリアスな性格は、さほど強くない。尖鋭に過ぎるような演奏にもなっていない。寒々としてもいない。それよりももっと、優しさや温もりの感じられる音楽が鳴り響いているのであります。
それでいて、力感に不足はありません。推進力も充分。作品が内蔵しているエネルギーが、的確に放出されている。そして、こけおどし的な表現は微塵も見いだせずに、ひたすらに作品の核心に切り込んでいこうという強い意志が感じられる。エネルギッシュかつドラマティックで、逞しい音楽が掻き鳴らされている。音楽全体が、実に活き活きとしていて、精彩に満ちている。更に言えば、彫琢が誠に深くもある。そんなこんなのうえで、繰り返しになりますが、優しさや温もりを湛えている。

純音楽的な美しさを湛えている、なんとも見事なショスタコーヴィチ演奏。実に立派で、充実度の高い、頗る魅力的な演奏であります。
この第10番に限らず、ザンデルリンクによるショスタコーヴィチは、どれもこれも聴き応え十分。ザンデルリンクによるショスタコーヴィチ、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたいと、切に願っております。