デ・フリーント&京都市交響楽団による演奏会(≪カルミナ・ブラーナ≫ 他)を聴いて

今日は、デ・フリーント&京都市交響楽団による演奏会を聴いてきました。演目は、下記の2曲。
●ブリテン ≪シンフォニア・ダ・レクイエム≫
●オルフ ≪カルミナ・ブラーナ≫
後者での独唱陣は、安井陽子さん(ソプラノ)、藤木大地さん(カウンターテナー)、大西宇宙さん(バリトン)という陣容。

この公演は、ロームシアター京都10周年(旧・京都会館をリニューアルして再開場してから10周年)と、京響創立70周年とを記念して開催される特別演奏会のうちの一つ。本演奏会はProject Aと題されており、Project Bとしては、今年の12月にブリテンの≪春の交響曲≫をメインに据えた演奏会(大友直人さん&京響による演奏)が催されます。ABともにブリテンの作品が含まれているのは、今年はブリテンの没後50年に当たることに依るのでしょう。ちなみに、Project Bはブリテンの命日である12月4日の開催となっています。

さて、本日の指揮者のデ・フリーントは、2024年から京響の首席客演指揮者を務めており、同ポストに着任して以降は年間に2本のペースで定期公演の指揮台に登っています。
古楽に関心を寄せている指揮者ではありますが、直近の京響定期ではブルックナーの交響曲第3番を採り上げているように、古典派から初期ロマン派あたりのみをレパートリーにしている指揮者でもなさそうです。とは言うものの、前回のブルックナーでは、音楽が粘るようなことがなく、目鼻立ちがクッキリとしていて、かつ、清新なブルックナー演奏を展開していました。その辺りは、いかにも古楽に通じている演奏家らしいところだと思える。
そんなデ・フリーントが、ブリテンとオルフで、どのような演奏を繰り広げてくれるのか。とりわけ、≪カルミナ・ブラーナ≫が、どんなふうになるのか。とても興味深いところでありました。
更には、安井陽子さん、藤木大地さん、大西宇宙さんの3人が、どのような歌を聞かせてくれるのかという点も、大きな楽しみでありました。

それでは、本日の演奏会をどのように聴いたのかについて、書いてゆくことに致しましょう。

まずは、前半のブリテンから。
真摯にして、清新な演奏でありました。これまでに接してきたデ・フリーントによる演奏と同様に、粘り気のない音楽づくりが為されていた。
そのうえで、静謐な場面と、ドラマティックな場面でのコントラストの鮮やかな演奏が繰り広げられることとなっていました。とりわけ、前者では、この作品ならでの、厳かにして敬虔な雰囲気がシッカリと表されていた。また、後者においては、躍動感に満ちた音楽が鳴り響いていた。しかも、音楽がダブつくようなことは皆無で、分離が良い。明晰であり、キリッと引き締まってもいた。
そんなこんなによって、目鼻立ちのクッキリとした、かつ、克明な音楽が奏で上げられることとなり、この作品の生命力が鮮やかに表出されることとなった。更には、総じて、誇張が無くて、地に足を着けた演奏となっていた。そして、この作品の実像を明らかにしてくれる、聴き応え十分な演奏となっていた。そんなふうに言いたい。
こうなると、いよいよ、≪カルミナ・ブラーナ≫が楽しみだ。そのような思いを抱きながら、休憩時間を過ごしたものでした。

それでは、ここからはメインの≪カルミナ・ブラーナ≫について。
こちらもまた、音楽が無闇に肥大化することのない、引き締まった演奏となっていました。その観点では、予想通りの≪カルミナ≫でありました。
そのうえで、音の動きが克明だった。そのことによって、明晰にして端麗な音楽が鳴り響くこととなっていたのであります。例えば、冒頭の「運命の女神フォルトゥナ」で、音量が絞られた箇所でのファゴットを中心にした音の蠢きなどは、音の粒がクッキリと立っていた。
その一方で、壮麗さにも不足はなかった。なおかつ、この作品ならではの素朴な性格も十分に描き出されていた。そんなこんなのコントラストが、鮮やかだった。しかも、そこには露骨さがなく、実直な演奏が展開されていた。
なるほど、聴き手をやたらと煽り立てるような演奏だった、とは言えそうにない。と言うよりも、全体を通じて、作品の実像を率直に提示する、といった演奏だったと言いたい。その点では、前半のブリテンと、ことを同じくしていた。これはすなわち、デ・フリーントの美質なのだと言えましょう。
更には、生気に溢れていて、しっかとした手応えがありつつも、爽やかさの残る≪カルミナ≫でもありました。
独唱陣では、まずもってバリトンの大西さんが、朗々としていて、かつ、闊達な歌唱を繰り広げてくれていて見事でありました。また、ソプラノの安井さんも、清潔感を漂わせながら、予想以上にドラマティックな雰囲気も出ていて、聴き応え十分でありました。その一方で、カウンターテナーの藤木さんは、必要以上に妖艶になっていて、私の趣味ではなかったのが残念でありました。
合唱陣は、逞しさや、しなやかさや、柔軟性や、輝かしさや、といったものを兼ね備えていて、誠に立派でありました。この演奏を聴き応えあるものにしてくれたという点では、合唱陣の貢献も大きかったと言いたい。
≪カルミナ・ブラーナ≫は、実演映えのする作品だと言えるかもしれませんが、そのようなところを抜きにしても、総じて秀演だった。そんなふうに言いたい演奏でありました。