ビシュコフ&チェコ・フィルによるマーラーの≪巨人≫を聴いて

ビシュコフ&チェコ・フィルによるマーラーの≪巨人≫(2021年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ビシュコフは、2018年にチェコ・フィルのシェフに就任していますが、その2018年から2015年にかけて、同団とマーラーの交響曲全集を完成させています。当盤は、その中の1枚。
さて、ここでの演奏についてでありますが、屈託のない音楽づくりによって、見通しの良い音楽が鳴り響くこととなっていると言いたい。しかも、全体的に、弾力性を帯びていて、かつ、力感にも不足がない。余裕を持って音楽を鳴らしている、といった印象が強い。
更には、演奏の端々からまろやかさが感じられる。この点については、チェコ・フィルの響きがまろやかである、といったことに依るところが大きいのではないでしょうか。
そのうえで、この曲における千変万化する表情を、鮮やかに描き上げてゆく演奏になっていると言いたい。
例えば、第1楽章の展開部では、メランコリックな雰囲気を湛えながら、次第に靄が晴れてくるような情景が思い浮かべられるような音楽となっている。しかも、再現部では、明朗にして伸びやかな音楽が奏で上げられていて、終結部に向けての昂揚感も自然な形で築かれてゆく。
伸びやかさという点では、おどけた雰囲気を秘めたレントラー舞曲である第2楽章での演奏において、最も顕著に現れているのではないでしょうか。とても晴れやかな音楽となっている。それでいて、あまり鄙びた感じになるようなことはなく、洗練味を帯びている。このことは、歌謡性の高い中間部での滑らかにしてまろやかな演奏ぶりによって強調されているとも言えそう。
第3楽章は、あまり沈鬱とした音楽とはなっておらずに、屈託のなさが際立っています。その分、音楽の流れが滑らかであり、人懐っこさが感じられもする。
最終楽章に入ると、一転して、ドラマティックな音楽が奏で上げられてゆく。それはまさに、嵐の音楽となっています。とは言っても、これ見よがしに音楽を煽るようなことはしていない。地に足の付いた劇性、と言いたくなるようなものが織り込まれている。
また、甘美な歌に満ちた第2主題での夢見るようなロマンティシズムの表出も鮮やかで、見事なまでのコントラストが築かれてゆく。更には、その直後で一旦築かれる昂揚感も、とても立派なものとなっている。しかも、ここでも決してコケ脅しな音楽となるようなことはなく、毅然とした態度が示されている。
かように、曲想に応じた性格付けが的確であり、起伏に富んでいるとともに、この楽章の構成を明らかにしてゆく演奏が繰り広げられているのであります。そのうえで、終結部では、開放感タップリで晴れやかで、しかも、壮大な音楽が奏で上げられ、昂揚感に満ちたものとなっている。

ビシュコフの充実ぶりを目の当たりにすることのでき、かつ、多幸感を味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。