メータ&ロス・フィルによるチャイコフスキーの≪悲愴≫を聴いて

メータ&ロス・フィルによるチャイコフスキーの≪悲愴≫(1977年録音)を聴いてみました。
明朗にして明快な≪悲愴≫であります。
メータにしては、グラマラスな音楽になっているというよりも、筋肉質に引き締まった演奏が展開されています。であるが故に、キビキビとした音楽運びが際立っていて、小気味が良い。隈取りの鮮やかな≪悲愴≫だとも言えそう。そして、ネアカでもある。
なんとも鮮やかな演奏ぶり。音の粒がクッキリと立っていて、かつ、全体が立体的に描き上げられているとも言えそう。
かように、悲壮感のあまり感じられない演奏でありますが、純音楽的な美しさに溢れているように思えます。機能美のようなものが感じられもする。総じて元気が良い。推進力に富み、力感に溢れてもいる。例えば、第1楽章の展開部などは、頗るドラマティックでエネルギッシュな音楽が奏で上げられている。また、第2楽章では、しなやかにして伸びやかに歌われていて、第3楽章では、音楽が存分に躍動していて、意気軒昂であり、かつ、スタイリッシュにしてダイナミックな音楽が鳴り響いている。最終楽章では、沈鬱なムードが漂うようなことはなく、スマートに音楽が進められている。
更には、全編を通じて爽快な音楽が鳴り響くこととなっている。それも、非常に心地よい爽快さがある。それは、音楽が伸びやかに呼吸しているからでもありましょう。
そのうえで、チャイコフスキーの音楽が宿している、ロマンティックでメランコリックな雰囲気も十分に感じさせてくれる。とは言いましても、過度に感傷的になるようなことはなく、すすり泣きを見せるようなことはない。例えば第2楽章や最終楽章においても、粘り気を見せるようなことはない。総じて、カラッとしたロマンティシズムが漂っている。
健康美のようなものが感じられる≪悲愴≫。見目麗しくもある。聴いていて打ちひしがれるようなことはなく、聴後に爽やかな後味の残る、小粋な≪悲愴≫となってもいる。
このような≪悲愴≫も、なかなか魅力的であります。





