ショルティ&シカゴ響によるドビュッシーの≪海≫の旧盤(1976年録音)を聴いて

ショルティ&シカゴ響によるドビュッシーの≪海≫(1976年録音)を聴いてみました。

明快で、キッチリとした線で描き出されている演奏となっています。とてもダイナミックで、豪快でもある。
それでいて、これよりも少し早い時期に完成されたベートーヴェンの交響曲での演奏と同様に、直線的であったり、力でねじ伏せたり、といった演奏にはなっておらず、ふくよかさが感じられる。色合いの微妙な変化を楽しむことができもする。しかも、シカゴ響による精緻なアンサンブルと、個々のソロの妙技に支えられながら。
ショルティと言えば速球派、しかも剛速球を投げ込む指揮者という印象が強いのではないでしょうか。しかしながら、このフランス音楽集は随分と様子が違います。肩の力が抜けている。強引さもない。そして、かなり手触りの柔らかい音楽となっている。聴くほうも、リラックスをして聴くことができる。(決して、いつものショルティは、緊張を強いる音楽づくりをしている、と言いたい訳ではないのですが…)
とは言うものの、柔らかみのある演奏だと言いましても、妥協は一切ありません。隅々にまでコントロールされた演奏になっているのは、流石はショルティであります。
そのうえで、ショルティならではの、痛快にして鮮烈な音楽が奏で上げられている。

全体的に、克明でキッチリとした音楽づくりを土台としながら、冴え冴えとした空気感と、エネルギッシュな感興に包まれた演奏。そんなふうに言えましょう。
独自の魅力を備えている、見事な、そして、素敵な演奏であります。

なお、ショルティ&シカゴ響のコンビは、1990年に同曲を再録音しており、そこでは、この旧盤での演奏以上に丸みを帯びた演奏が繰り広げられています。そうであるだけに、この旧盤のほうが、ショルティの個性が鮮明に現れていると言えるのではないでしょうか。