セル&クリーヴランド管によるワーグナー集を聴いて

セル&クリーヴランド管によるワーグナー集(1962年録音)を聴いてみました。
収められているのは、下記の曲。
≪トリスタンとイゾルデ≫前奏曲と愛の死
≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫第1幕への前奏曲
≪タンホイザー≫序曲

セルならではの、筋肉質な演奏が繰り広げられています。巧緻であり、粒立ちの鮮やかな演奏となってもいる。
それでいて、豊饒でもある。そう、全くもって、痩せぎすな音楽にはなっていないのであります。キリっと引き締まっていつつも、豊麗な音楽が響き渡っている。もっと言えば、劇的でもある。
≪トリスタンとイゾルデ≫の前奏曲においては、押しては引く、という形で音楽が前進してゆく様が、赤裸々に表出されてゆく。そして、十二分に官能的でもある。また、愛の死の最後では、音楽が開放的に「開き切る」ようなところが皆無でありつつも、内部エネルギーを充満させながら、昂揚感に満ちた音楽が鳴り響くこととなっている。
≪マイスタージンガー≫の前奏曲は、ここに収められている3曲の中では、最も引き締まった演奏になっていると思われます。それでいて、露骨に華やいだ雰囲気が演出されている訳ではないものの、悦楽感に不足はない。
≪タンホイザー≫序曲では、推進力に満ち、律動的で、存分にうねってゆく音楽が奏で上げられている。
更には、ここでの3曲に共通したこととして、力感に溢れていて、かつ、生命力に満ちた演奏が展開されていると言いたい。
そのうえで、響きは匂い立つように美しく、音楽が示す佇まいは凛とした美しさを湛えている。

なんとも高潔で、格調高く、力強さの漲っている演奏。しかも、ワーグナーの音楽に相応しい、ドラマや、情感の豊かさを湛えたものとなっている。
いやはや、絶品だと言えましょう。