ハイティンク&ウィーン・フィルによるベルリオーズの≪幻想≫を聴いて

ハイティンク&ウィーン・フィルによるベルリオーズの≪幻想≫(1979年録音)を聴いてみました。
当盤は、ハイティンク&ウィーン・フィルのコンビの初録音であり、かつ、ハイティンクにとってはフィリップス以外のレコード会社への初めての録音でありました。また、ハイティンクによる≪幻想≫の、唯一の正規録音となったのでありました。

1970年代にコンセルトヘボウ管と数多くの音盤を制作していたハイティンク。そこに刻まれている演奏の大半は、堅実な音楽づくりを土台にしながら、作品の持っている力感をキッチリと描き出し、エネルギーを過不足なく放出しながら逞しい生命力を吹き込んでゆく、といった、頗る充実度の高いものであったと考えています。
そこへいきますと、ここでのウィーン・フィルとの≪幻想≫は、力感や逞しさは薄いように思われます。それよりも、優美さが強調されたものとなっている。それはきっと、ウィーン・フィルが相手である、ということにも依るのでしょう。
その結果として、この作品が持っている、奇怪で、かつ、狂気を孕んでいる性格は弱められ、この作品の表題にもなっている「ファンタスティックな」音楽世界が広がることとなっている。それはまた、このLPのジャケットに採用されているルドンの絵の世界に通ずるもののようでもあります。しかも、ハイティンクならではの誠実さを基調としながら。

ハイティンク&ウィーン・フィルというコンビだからこその、ユニークな魅力を湛えている≪幻想≫。そんなふうに言えるのではないでしょうか。

ちなみに、第2楽章にはコルネットが加えられています。
1970年代にはコルネット版が採用されることが多かったのですが、最近は、ほとんど見かけません。そういうこともあり、コルネット版による≪幻想≫を懐かしく聴くことができたのでありました。