ブレンデル&ラトル&ウィーン・フィルによるベートーヴェンの≪皇帝≫を聴いて

ブレンデル&ラトル&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集から≪皇帝≫(1998年録音)を聴いてみました。
ブレンデルのピアノは、ここでも誠に美しい。柔らかみがあって、暖かみのある響きで敷き詰められています。実にまろやかで、ふくよかで、膨らみのある音でもある。それでいて、音の粒がクッキリとしていて、克明な音楽が鳴り響くこととなっている。
更には、風格豊かな音楽づくりが示されています。壮麗な音楽が築き上げられている、といった感じではないのですが、拡がり感のある音楽となっている。それは、力み返ったところが一切ない中から、ごくごく自然に立ち上がってくる「宏大さ」、とでも言えそうなもの。であるからこそ、この作品が持っている壮大な音楽世界が、巧まずして表されてゆく。
しかも、この作品に相応しい晴れやかさにも不足はない。決して派手な素振りを見せるようなことはないものの、充分に輝かしくもある。
そんなこんなのうえで、滋味深い音楽が奏で上げられてゆく。奥行きのある演奏だとも言えそう。
そのようなブレンデルをサポートしているラトルもまた、変に気負うようなところはないのですが、たっぷりと音楽を奏で上げていて、力感や逞しさにも不足はない。しかも、贅肉の付いていない、端正な音楽づくりが為されている。そのようなこともあって、生気に満ちていて、かつ、爽快な音楽が鳴り響くこととなっています。
そこに、ウィーン・フィルのまろやかで柔らかな響きが加わることによって、より一層魅力的な音楽となっている。
≪皇帝≫の魅力を、安心しながら堪能することのできる演奏。しかも、ピアノソロもオケも、頗る美しい。それは、音色の点においても、音楽が示している佇まいにおいても。
なんとも素敵な≪皇帝≫であります。





