ギレリス&ヨッフム&ベルリン・フィルによるブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴いて

ギレリス&ヨッフム&ベルリン・フィルによるブラームスのピアノ協奏曲第1番(1972年録音)を聴いてみました。

毅然としていて、かつ、雄渾な演奏であります。それはもう、出だしからしてそう。覇気が漲っていて、逞しくて、壮麗な音楽世界が屹立している。
この組み合わせによる第2番での演奏にも同様なことが当てはまりましょうが、より直截的な性格を備えている第1番において、これらのことはより一層顕著に現れているように思えるのであります。そう、拡がり感がありつつ、ホットで、エネルギッシュな演奏が繰り広げられている。
それでいて、力み返っているようなところは全くない。誇張した表現も、一切感じられない。徹頭徹尾、音楽に対する誠実さに溢れた演奏となっている。そのうえで、重厚にして、貫録豊かな音楽が響き渡っているのであります。剛毅にして、強靭な演奏が示されている。逞しいまでの生命力が宿ってもいる。
そんなこんなのうえで、骨太な音楽づくりの先から、ロマンティックな味わいが湧き出てくるような演奏となっている。力強くてふくよかでありつつも、キリっと引き締まった佇まいを見せてくれてもいる。

それらはまさに、ギレリスの音楽性と、ヨッフム&ベルリン・フィルの音楽的な志向とが融合された結果であると言えましょう。
更に言えば、聴き手に過度な緊張を強いるようなところや、高圧的なところは微塵もなく、親しみやすさや人懐こさの感じられる、暖かみのある演奏となってもいる。この辺りは、ヨッフムに依るところが大きいのかもしれません。

色々と述べてきましたが、複層的な魅力を宿している、なんとも見事で、充実度の頗る高い、素晴らしい演奏であります。