ヨッフム&ベルリン・フィルによるブルックナーの≪テ・デウム≫を聴いて

ヨッフム&ベルリン・フィルによるブルックナーの≪テ・デウム≫(1965年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

この作品ならではの、壮麗な音楽世界が広がっています。テ・デウムは、神を賛美し、神への感謝を捧げる宗教音楽でありますが、そのような性格がよく表されている音楽が鳴り響いている。
とは言いましても、かしこまっていたり、厳粛に過ぎたり、といったような演奏にはなっていません。それよりももっと、健康的なものだと言えましょう。
それでいて、決して開放的な音楽になっている訳ではない。凝縮度の高い演奏が展開されています。コクの深さが備わってもいる。
そのうえで、仰々しさがなくて、明朗な音楽が奏で上げられてゆくこととなっている。その先には、「率直な祈り」とでも呼べそうなものが感じられもする。
交響曲第7番の第2楽章で用いられる旋律が現れると、「清浄なる歓び」といったようなものを帯びていき、そのまま力強く締めくくられる。

肩肘を張らずに、羽を伸ばしながら、この作品の音楽世界に身を浸すことのできる演奏。そのうえで、十分に敬虔な雰囲気に包まれている演奏となっている。そんなこんなも、ヨッフムの音楽性と人間性に依るものなのでありましょう。
ヨッフムならではの魅力を湛えている、聴き応え十分で、かつ、なんとも素敵な≪テ・デウム≫であります。