リパッティによるショパンのワルツ集を聴いて

リパッティによるショパンのワルツ集全14曲(1950年録音)を聴いてみました。

純真無垢な演奏が繰り広げられています。とても玄妙でもある。そして、そこはかとない儚さが漂ってくる音楽となっている。
響きは、どこまでもピュア。透明感のある、澄み切った音楽が奏で上げられています。更には、詩情に満ち、ナイーヴな音楽が響き渡っている。であるからこそと言いましょうか、寂しげで儚げでもある。それは、33歳で急逝した薄幸のピアニスト、というイメージが重なり合っての印象でもあるように思える。
と言いつつも、打鍵がか弱い訳ではありません。曲想に応じては、ワルツならではの弾むような楽し気な雰囲気や、躍動感や、華やかさが備わってもいる。しかしながら、その裏側には、常に「もの寂しげな」感情が潜んでいるような音楽となっている。それは、モーツァルトの音楽がそのような性格を持っているのに似ている。
そのうえで、ショパンならではの抒情性や繊細さや、詩情性の豊かさや、といったものが存分に表されている音楽となっている。清浄なる歌心に溢れてもいる。更には、哀愁に満ちた音楽が鳴り響くこととなっている。
しかも、厳粛な雰囲気の漂うショパン演奏になっている。そして、気高くて、凛としている。洗練の極致にある演奏だとも言いたい。

感受性豊かなリパッティが奏でるショパンのワルツ集。それは、じっと心に染み入ってくる、なんとも素晴らしい演奏であります。