ムーティ&ウィーン・フィルによるモーツァルトの交響曲第33番を聴いて

ムーティ&ウィーン・フィルによるモーツァルトの交響曲第33番(1998年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

作曲者が23歳の時に書き上げられたこの作品は、モーツァルトの交響曲の中でも、とりわけ、伸びやかで颯爽とした音楽となっています。とてもチャーミングな作品。
ここでのムーティによる演奏は、そのような性格をクッキリと描き出してくれています。実に晴れやかな演奏となっている。歌心に満ちていて、明朗でもある。
ところで、ムーティは、多面的な性格を持っている指揮者であると思っております。エネルギッシュでゴージャスで、グラマラスな演奏することが多い反面、時にストイックでキリッと引き締まったスリムな演奏を繰り広げることもある。場合によっては、その両面が同居したような音楽づくりを施す、という離れ業を示すこともある。
(例えば、1990年代以降のヴェルディオペラなどで、両面を兼ね備えた演奏を数多く繰り広げてくれているように感じています。)
そこへいきますと、ウィーン・フィルと共演してのモーツァルトの交響曲の録音では、後者(ストイックでスリム)の特徴が顕著であるように思うのでありますが、この第33番では、ふくよかさが現れているように思えます。良い意味で、素直な演奏ぶりが示されている。
テンポは取り立てて速いという訳でもないのですが、程よい疾走感を備えている。キビキビとしてもいる。
そこから生じるいでたちは、この作品に性格に似つかわしい。生彩感に満ちていて、ウキウキと心弾むような晴朗さに溢れています。そのうえで、適度にダイナミックでもある。
これらはすなわち、ムーティの持ち味に他ならないと言えましょう。
そこに添えられる、ウィーン・フィルの艶やかでしなやかな美音も、実に魅力的であります。
そのことを認めた上で、ここでのウィーン・フィルの響きは、普段の彼らのそれと比べると、より引き締まっているように思えます。実にキリッとしている。それは、時にストイックな音楽を志向するムーティの音楽性に依るのではないでしょうか。

ムーティの美質と、モーツァルトの音楽とが幸せな出会いを果たしている演奏。そこに花を添えているウィーン・フィルもまた、実に魅力的。
なんとも素敵な演奏であります。