トスカニーニ&NBC響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫を聴いて
トスカニーニ&NBC響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫(1941年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
灼熱のように熱く、鮮烈な演奏であります。そして、強靭極まりない。
速めのテンポでグイグイと押していっている演奏。その推進力や、凄まじいものがあります。歯切れが良く、しかも頗る緻密で克明。厳格であって、凝縮度が高くて、彫琢が深い。毅然としてもいる。それでいて、身のこなしがしなやか。歌謡性に溢れてもいる。音楽全体が輝きに満ちている。起伏は大きく、音楽全体がうねりにうねっている。
何よりも驚くべきは、これらの事柄が、絶妙な均衡の上に成り立っているとしか思えないこと。苛烈な演奏ぶりでありつつも、大袈裟な感じが全くしない。頗る情熱的でありつつも、主情に流されるようなことはなく、強い客観性が感じられもする。そんなこんなのために、全てにおいて何の矛盾もなく、ただただ生命力に溢れた音楽を形作ることのみに全ての要素が奉仕をしている、と言いたくなります。
しかも、緩徐楽章となる第3楽章では、柔らかみを帯びていて、憧憬に満ちた音楽が鳴り響いている。
まさに凄演。多面的な魅力を備えている演奏となってもいる。その様は、驚異的としか言いようがありません。
これはもう、トスカニーニの美質が遺憾なく発揮されている、見事な、そして、唖然とするほどに素晴らしい演奏であります。