ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるシューベルトの≪未完成≫(1978年 ウィーンライヴ)を聴いて

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるシューベルトの≪未完成≫(1978年 ウィーン芸術週間でのライヴ)を聴いてみました。

ムラヴィンスキーにしては、角の取れた、丸みを帯びた音楽が鳴り響いています。それは、会場がウィーン・ムジークフェラインの大ホールだったから、ということが影響しているのでありましょうし、録音の録り方にも依るのでしょう。
そのうえで、ムラヴィンスキーならではの峻厳な演奏が繰り広げられています。なんともデモーニッシュな音楽世界が広がっている。凝縮度が頗る高くもある。と言いましても、決して不必要に誇張したものではなく、端然とした佇まいをしている。毅然としてもいる。
潔癖で、妥協のない演奏が繰り広げられてもいます。そう、とても純度の高い音楽が鳴り響いている。
しかも、冷徹なようでいて極めてロマンティックである。それはもう、格調の高いロマンティシズムと呼びたくなるほど。
更には、厳格でありながら、ライヴならではの感情の振幅の大きさの備わっている演奏となっている。

シューベルトの作品にしては、気宇が大き過ぎると言えるかもしれません。しかしながら、威厳のようなものが備わっているここでの演奏には、そのような思いを超えて、私を心震わせるものとなっている。
神品と呼びたくなる、素晴らしい演奏。そんなふうに評したくなります。