ギーレン&南西ドイツ放送響によるベルクの≪ルル≫組曲を聴いて
ギーレン&南西ドイツ放送響によるベルクの≪ルル≫組曲(2007年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
ギーレンならではの、明晰な演奏が繰り広げられています。響きが混濁することなく、透明感の強い演奏だとも言えそう。
音の粒が立っている。そして、描かれてゆく線は、とても克明。冴え冴えとしていて、研ぎ澄まされた音楽が奏でられています。
それでいて、線がきつすぎる、といったことはない。また、過剰に鋭角的になっている訳でもない。なるほど、スリムな響きをしていますが、痩せぎすな音楽にはなっておらず、ましてや冷酷な音楽などになっていない。肌触りがひんやりとし過ぎている訳でもない。適度に豊麗であり、かつ、しなやかさを備えたものとなっています。色彩感が豊かでもある。
そのようなこともあって、抒情味を帯びていて、ロマンティックな雰囲気を湛えた音楽が鳴り響いています。
そのうえで、情緒に流されるようなことはない。或いは、ドロドロした音楽になるようなこともない。スッキリとした佇まいをしていて、キリっとした表情をしている。
そのような演奏ぶりが、この作品に、とても似つかわしい。
ギーレンは、近現代の作曲家を得意としている指揮者でありますが、その面目躍如たる見事な演奏。
この作品の音楽世界にドップリと身を浸すことのできる、素敵な演奏であります。