アントニーニ&イル・ジャルディーノ・アルモニコによるペルゴレージの≪スターバト・マーテル≫を聴いて

アントニーニ&イル・ジャルディーノ・アルモニコによるペルゴレージの≪スターバト・マーテル≫(2003年 ヴェルビエ音楽祭ライヴ)を聴いてみました。
独唱はネトレプコ(S)とコジェナー(MS)。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
20年以上前にライヴ収録されたものですが、初めて世に出たのは今年の春のことのようです。

アントニーニによる音楽づくりは、なんとも鮮烈なもの。とてもアグレッシブであり、かつ、生気に溢れています。
それでいて、決して雑になるようなことはない。音楽がエキセントリックに響くようなこともない。むしろ、頗る清浄な音楽になっています。そして、厳粛であり、敬虔な音楽世界が出現することとなっている。
そのうえで、第6曲目の” Vidit suum dulcem natum“などでは、胸に突き刺さるような切迫感を伴った音楽が奏で上げられている。
しかも、全編を通じて、身のこなしが頗るしなやか。華美に着飾ったようなところや、大袈裟に振舞うようなことは皆無でありつつも、ドラマティックにして、流麗な演奏が展開されています。
そのようなアントニーニによる音楽づくりをバックに、2人の人気女声歌手が、真摯な歌を披露してくれています。こちらもまた、オーバーアクションになるようなことは一切ない。音楽が脂ぎったり、重くなったりすることもない。折り目正しくて、なおかつ、清廉な歌が紡ぎ上げられている。そして、アントニーニに引けを取らないほどにドラマティックであり、厳粛でもある。しかも、そのような表現に、取り繕ったようなところが微塵も感じられない。
更に言えば、情感豊かな歌が繰り広げられている。

アントニーニの確かな音楽性を裏付けにした音楽づくりと、2人の名唱によって、この作品の魅力が余すところなく表出されている、頗る魅力的な演奏であります。