ヴェンゲーロフ&メータ&イスラエル・フィルによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて

ヴェンゲーロフ&メータ&イスラエル・フィルによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番(1991年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ヴェンゲーロフの技巧の高さと、美音とを楽しむことのできる、痛快な演奏となっています。
この協奏曲は、明朗な旋律に彩られている中で、アクロバット的なパッセージが散りばめられており、名技性を遺憾なく発揮できる作品である、と言えましょう。
そのような側面でいけば、この演奏はもう、完璧であると思います。どこにも破綻がなく、滑らかに、かつ、颯爽と弾きこなしてゆくヴェンゲーロフ。しかも、音は誠に美しい。キリッとしていて、それでいてまろやか。艶やかでもある。
しかも、バリバリと弾いている、といった感じが微塵もありません。そう、押しつけがましさのない演奏となっている。余裕をもって弾きこなしているからなのでありましょう。であるが故に、常に美感を損ねることのない演奏となっている。弱音で速いパッセージを駆け抜けてゆく場面などは、とても小気味良くもある。
そのうえで、屈託がなくて、明朗でもある。そのような風情が、パガニーニの音楽には誠に似つかわしい。
そんなヴェンゲーロフをサポートしているメータは、オペラを得意としているだけであって、ツボをシッカリと押さえつつ、ヴェンゲーロフをクッキリと引き立たせるような音楽づくりを施してくれています。そのうえで、ドラマティックな感興を充分に醸し出してくれている。そして、こちらもまた颯爽としていて、頗る小気味が良い。

この作品を聴く歓びを存分に味わうことのできる、素敵な演奏であります。

なお、1974年生まれということで、現在は50歳になっているヴェンゲーロフですが、最近あまり名前を聞きません。当盤は、弱冠17歳のときの記録ということになります。
ネットで調べてみますと、2008年から指揮の勉強に専念するためにヴァイオリンの演奏活動を休止すると宣言したものの、2011年からヴァイオリンの演奏活動を再開したようです。現在のヴェンゲーロフのヴァイオリン演奏は、どのようなものになっているのでしょう。ちょっと気になります。