バルビローリ&ロンドン響によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫を聴いて

バルビローリ&ロンドン響によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫(1969年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

やや遅めのテンポを採りながら、悠然たる演奏が展開されています。風格豊かでもある。
しかも、生命力に溢れていて、雄渾で逞しい。決して大袈裟な表情を見せるようなことはないのですが、熱量の大きな演奏となっています。
そのうえで、ときに、音楽をタップリと歌わせる(とりわけ、「英雄の伴侶」の後半部分や、「英雄の引退と完成」において顕著)。ときに、粒立ちの鮮やかな音楽を奏で上げてくれている(「英雄の敵」において顕著)。ときに、音楽を存分に煽ってゆく(「英雄の戦場」において顕著)。
更に言えば、多くのバルビローリによる演奏からも感じられる「気品」が、この演奏にも漂っている。エレガントであり、滋味深くもある。彫りが深くもある。そんなこんなによって、音楽的な美感に溢れた演奏となっています。コクの深さが感じられもする。

R・シュトラウスの作品ならではの色彩豊かで豪華絢爛たる音楽世界が広がってゆく、といった演奏にはなっていないものの、壮麗でスケールが大きい。そのうえで、ズシリとした手応えを備えていて、かつ、凛とした演奏を繰り広げている、ここでのバルビローリ。
独特の魅力を湛えていて、しかも、聴後の満足感の頗る大きな演奏。
なんとも素晴らしい≪英雄の生涯≫であります。