プレヴィン&ロス・フィルによるバルトークの≪管弦楽のための協奏曲≫を聴いて
プレヴィン&ロス・フィルによるバルトークの≪管弦楽のための協奏曲≫(1988年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
プレヴィンは、1985-89年にロス・フィルのシェフを務めており、その時期に録音されたものになります。
また、バルトークの録音は非常に珍しく、セッション録音では、他にはパールマンとのヴァイオリン協奏曲第2番が遺されているくらいなのではないでしょうか。
さて、ここでの演奏はと言いますと、マイルドで、暖かみを帯びたものとなっています。そのようなこともあって、エレガントな佇まいをしているオケコンとなっている。
それでいて、決して”ひ弱な”演奏にはなっていません。充分なる躍動感や力感を備えている。息遣いが豊かでもある。そして、押し出しにも不足はない。と言いながらも、粗暴な感じが全くしない。肌触りが滑らかで、まろやかな音楽が鳴り響いている。
そのうえで、粒立ちの鮮やかさや、立体感も充分。例えば、第2楽章の「対の遊び」では、それぞれの楽器群が旋律を奏でた後の”つなぎ”として現れるピチカートなどは、クッキリと浮かび上がってきている。第4楽章の「中断された間奏曲」の中間部、ショスタコーヴィチの交響曲第7番を揶揄する箇所の始まりは、実に軽やかなものとなっている。
そして、最終楽章は、この演奏の白眉でありましょう。推進力に満ちていて、明快で鮮烈でありつつも、過度に尖鋭な音楽にはなっていない。弾力性を伴っていて、晴朗な音楽が奏で上げられている。
プレヴィンの美質がギッシリと詰まっている演奏。そして、そこここに音楽への感性の豊かさが感じられる。
ユニークな魅力を備えている、素敵なオケコンであります。