ボールト&ロンドン・フィルによるブラームスの交響曲第1番を聴いて

ボールト&ロンドン・フィルによるブラームスの交響曲第1番(1972年録音)を聴いてみました。

ボールト卿(1889-1983)と言えば、「イギリス音楽のスペシャリスト」というイメージが強いのではないでしょうか。とりわけ、ホルストの≪惑星≫とは切っても切れないように思えます。1918年の初演を指揮したのがボールトであり、生涯で5度もレコーディングしているのですから。
そのようなボールト卿でありますが、ドイツ音楽での演奏もとても素晴らしいのです。この演奏が含まれている11枚組のボックスCDには、バッハからモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ワーグナーなどの作品が収められていますが、どれも一級品であると思っています。
さて、ここでのブラームスの交響曲第1番についてであります。

なんとも見事な演奏であります。
風格の豊かな音楽が鳴り響いています。それでいて、肩肘張った感じは微塵もなく、親しみ深い。
響きには十分な厚みがある。それはまさに、ブラームスの音楽に相応しいもの。そして、音楽がうねっていて、ドラマティックな感興にも不足はない。力感に溢れていて、ホットな音楽が繰り広げられています。
と言いつつも、過度に暑苦しくない。熱量や運動量は十分でありながらも、颯爽としていて、清涼感がある。決してサラサラと流れている訳ではないのに、爽快感を伴っている音楽となっている。そう、押しつけがましさの全くない音楽となっているのであります。
そのうえで、隅々までが充実し切っている。品格の高さのようなものが感じられもする。そして、誠に立派な音楽が鳴り響いている。ニュアンスが細やかで、歌謡性も高い。作品の魅力を語り尽してくれた、とってもチャーミングな演奏。
更には言えば、実に若々しくて、壮健な演奏になっている。これが、80歳を優に超えた指揮者による演奏だなんて、信じられません。

いやはや、実に見事な、そして、素敵な演奏であります。