クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィルによるブルックナーの交響曲第8番(1961年ライヴ)を聴いて
クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィルによるブルックナーの交響曲第8番(1961年ライヴ)を聴いてみました。
なんとも巨大な演奏が繰り広げられています。遅めのテンポを基調として、確固とした足取りのもとに音楽は進められてゆく。
そして、これはウィーン・フィルの美質の現れなのでしょうが、しなやかさや柔らかさも兼ね備えた演奏となってもいます。普段のクナッパーツブッシュによる演奏でしばしば受ける、ゴツゴツとした肌触りがあまり感じられない。
と言いつつも、基本的には、やはり無骨な演奏となっています。或いは、愚直な演奏だとも言えそう。そう、媚びを売るようなところが全くない。そのうえで、壮大な音楽の建造物を築き上げてゆくような演奏が繰り広げられている。そして、重心を低く取りながら、堅固で重々しい音楽が奏で上げられている。そんなこんなによって、ズシリとした手応えのある音楽が鳴り響くこととなっている。凝縮度が頗る高くもある。そのうえで、広壮な世界が広がってゆく音楽となっている。
堂々たる姿を見せてくれている、ここでのブルックナー演奏。そして、崇高でもある。とりわけ、第3楽章においてその思いを強くする。更には、第3楽章および最終楽章での昂揚感は、破格なものとなっている。
そこに、ウィーン・フィルの艶やかな響きが加わることによって、無骨で重厚で壮大な音楽でありつつも、美麗な音楽としての性格を併せ持つことになっていると言えるのではないでしょうか。それはすなわち、壮麗な音楽と呼べるようなものだとも言いたい。
偉容を誇る、なんとも見事な演奏。畏敬の念を覚えるような演奏だとも言えそう。そして、実に実に魅力的な演奏となっています。