シルヴェストリ&ウィーン・フィルによるプロコフィエフの≪三つのオレンジへの恋≫組曲とハチャトゥリアンの≪ガイーヌ≫組曲を聴いて

シルヴェストリ&ウィーン・フィルによるプロコフィエフの≪三つのオレンジへの恋≫組曲とハチャトゥリアンの≪ガイーヌ≫組曲(1960年録音)を聴いてみました。

なんとも豊潤な演奏な演奏が展開されています。
そのような中にも、切れ味が鋭さや、ワイルドさが感じられる。ある種、土俗的でもある。そのような音楽づくりが、この両曲には、とても似つかわしい。そしてここには、「爆演型」の指揮者と呼ばれ、濃密な表現を採ることの多かったシルヴェストリの真骨頂が示されているとも言えそう。
特に、≪ガイーヌ≫において、そのような傾向が強いように思えます。とても鮮烈であり、かつ、「子守歌」などでは官能的とも言えそうな音楽が鳴り響いている。
とは言うものの、決して粗野なものにはなってはいません。そう、潤いのある音楽が鳴り響いているのであります。そのうえで、ドラマティックでスリリングな感興が見事に織り込まれている。突進力のようなものが感じられる。逞しい生命力に満ちている。拡がり感も充分。そんなこんなもあって、足腰のシッカリとしている演奏だと言いたくなる。
しかも、ウィーン・フィルの柔らかくてふくよかな美音が、なんとも魅力的であります。シルヴェストリの土俗的な音楽づくりに、洗練味を加えてくれているとも言えそう。そして、演奏に更なる潤いを与え、艶やかさを増してくれています。

シルヴェストリによる奔放にして率直な音楽づくりに、ウィーン・フィルの美音加わることによって、聴いていてワクワクしてくる演奏となっている。
いやはや、なんとも素敵な演奏であります。
(なお、≪ガイーヌ≫からは3曲が演奏されていますが、「レスギンカ」が入っていないのが残念であります……)