ポゴレリッチによるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫を聴いて

ポゴレリッチによるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1995年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

力強くて、かつ、精妙な演奏となっています。更には、テクニックの切れが、端々から感じられもする。
全体的に遅めのテンポが採られていて(演奏時間は42分強)、感興豊かにして、情感たっぷりに音楽は奏で上げられてゆく。そのうえで、これはポゴレリッチらしいところだと言えるのかもしれませんが、ある種の神秘的な雰囲気が漂ってもくる。
「ブィドロ」では、極めて遅いテンポで、強靭なタッチを繰り出しながら、重々しい音楽が奏でられています。そこからは、重たい車を曳く牛の喘ぎが聞こえてくるかのよう。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」では、壮絶かつ幽遠な音楽が鳴り響いている。このナンバーと「カタコンベ」が、ポゴレリッチによる≪展覧会の絵≫の中でも最も神秘的であるように思えたものでした。「カタコンベ」では、玄妙さが感じられもする。
一方で、「テュイルリーの庭」や「殻をつけたひなの踊り」といった軽妙なナンバーでは、リズミックに音を転がしながら、キラキラとした演奏ぶりが示されている。
或いは、ラヴェルが管弦楽化した際にカットされた「プロムナード」では、誠に壮麗な音楽が鳴り響いている。
それらの末に、「ババ・ヤーガの小屋」から「キエフの大門」にかけて、壮絶かつ鮮烈で、宏壮なクライマックスが築かれている。そして、ここでも音の煌めきが感じられる。

ポゴレリッチの類まれな音楽性が、クッキリと現れている演奏。そのうえで、聴き応え十分な演奏となっている。
ユニークな魅力に包まれている、素敵な演奏であります。