キーシン&アバド&ベルリン・フィルによるプロコフィエフのピアノ協奏曲第1,3番を聴いて
キーシン&アバド&ベルリン・フィルによるプロコフィエフのピアノ協奏曲第1,3番(1993年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
神童と騒がれ、10代からインターナショナルな演奏活動を行っていたキーシン。これは、そんなキーシンが22歳になる直前の録音となります。
ここでの演奏はと言いますと、敏捷性の高いものとなっています。このことは、キーシンにもアバドにも当てはまる。
エッジが立っていて、鋭敏な演奏は繰り広げられている。水際立った演奏ぶりだとも言えましょう。それはそれは、胸のすく演奏となっています。
それでいて、音楽は軽薄なものとなっていません。むしろ、ドッシリとした重しのようなものが感じられる演奏となっている。と言いつつも、決して重々しい演奏にはなっておらず、キビキビとした運動性が感じられる。鮮烈でもある。スリリングでもある。
このような演奏が可能となったのは、アバドの音楽性の豊かさと、ベルリン・フィルの機能性の高さが大きく貢献しているのでありましょう。そのようなアバド&ベルリン・フィルに、若きキーシンは臆することなく、切れのあるテクニックを駆使しながら、恰幅が良くて、風格のようなものを漂わせる弾きっぷりを示しているところが、なんとも見事。しかも、粒立ちの鮮やかで、色彩豊かな演奏が繰り広げられている。
その一方で、第3番の第2楽章などでは、キーシンの感受性の豊かさが滲み出ているような、精妙な音楽が奏で上げられている。
聴き応え十分な、そして、なんとも痛快な演奏。
いやはや、素晴らしい演奏であります。