フランチェスカッティ&ミトロプーロスによるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて

フランチェスカッティ&ミトロプーロス&ウィーン・フィルによるブラームスのヴァイオリン協奏曲(1958/8/24 ザルツブルク音楽祭ライヴ)を聴いてみました。

凛としていて、かつ、気高さの感じられる演奏であります。
フランチェスカッティは、持ち前の美音を駆使しながら、普段にも増して彫りが深くて厳格な演奏を繰り広げてくれているように思えます。甘美であり、まろやかであり、流麗で伸びやかでありつつも、適度にストイックでもある。そう、単に甘美な音楽世界を追求するような演奏ぶりではなく、キリっと引き締まった音楽づくりが為されているのであります。
その一方で、ミトロプーロスによる音楽づくりは、いつもながらの明晰な演奏ぶりをベースにしながらの、峻厳なものとなっている。それでいて、必要以上に鋭利になるようなことはなく、優美さが感じられる指揮ぶりとなってもいる。
そのような両者の演奏ぶりを、ウィーン・フィルが、いつもながらの麗しいまでの美音を惜しげもなく提供しながら、見事に繋ぎ合わせてくれているように思える。まろやかで優美であるというこの演奏の特徴を、ウィーン・フィルが強調してくれていると言えそう。

ソリスト、指揮者、オーケストラと、三者の美質が見事に融合された高潔で美しい音楽が、ここでは鳴り響いていると言えましょう。幽玄の世界に遊ぶような雰囲気を持ちつつ、伸びやかで晴朗で、典雅でもある。そんなこんなによって、凛としていて、気高い音楽世界が立ち昇ってくる演奏となっている。
聴き応え十分であるとともに、うっとりするような魅力を湛えた、素敵な素敵な演奏であります。