パーヴォ・ヤルヴィ&NHK交響楽団によるバルトーク集を聴いて

パーヴォ・ヤルヴィ&NHK交響楽団によるバルトーク集(2017/9/27,28 ライヴ)を聴いてみました。
収められているのは、下記の3曲。一夜の演奏会で演奏された全演目が収録されているようです。
≪弦楽のためのディヴェルティメント≫
≪舞踏組曲≫
≪弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽≫
図書館で借りたCDでの鑑賞になります。

パーヴォならではの、研ぎ澄まされた感性によって奏で上げられている、明快な演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。全体を通じて、隈取りのクッキリとした音楽が鳴り響いている。更には、とても冴え冴えとしている。それでいて、寒々としている、といったことはない。
更には、過度なまでに鋭利であったり、鮮烈であったり、といったこともありません。土俗的だといったことも、殆ど感じられない。洗練味を帯びた演奏になっている。
そんなこんなもあって、クリアにして、端正なバルトーク演奏になっていると言えましょう。それ故に、ピュアな美しさを湛えたものになってもいる。
そのうえで、N響の機能性の高さが存分に発揮されています。精緻にして、克明な演奏が展開されている。隈取りの鮮やかさは、その証だと言いたい。
(なお、当盤に添えられている解説書に依れば、パーヴォは、N響の機能性の高さを世界のトップ・オーケストラに匹敵するものだと評価しているようです。)

そのような演奏ぶりが示されている当盤ですが、例えば、≪ディヴェルティメント≫では、躍動感に満ちた演奏が繰り広げられている。しかも、形式美や、構成感の確かさ、といったものが滲み出ているところが見事であります。
≪舞踏組曲≫は、力感が十分で、推進力に満ちたものになっています。更には、この作品ならではの滑稽味が感じられつつも、それがシニカルなものに傾くことがないところが、なかなかに個性的だと言いたい。
≪弦・打・チェレスタ≫は、このバルトーク集での演奏の集大成になっていると言えるのではないでしょうか。静と動のコントラストが、頗る明瞭でもある。
第1曲目などは、あまり暗鬱としたものになっていない。更には、凄惨な雰囲気は薄く、身が切られるような思いを抱くようなこともない。しかも、十分にクリアな演奏ぶりが示されている。そこから、第2曲目に入ると、一気に生気を帯びた演奏が繰り広げられてゆく。推進力豊かで、音楽が存分に渦巻いてもいる。第3曲目では、冴え冴えとしていて、精妙な音楽世界が描き上げられてゆくのですが、やはり、あまり寒々としていない。続く終曲では、活力に満ちた演奏が展開されてゆく。しかも、変に賑々しくなったり、空騒ぎになったり、といったようなことはない。そのうえで、誠に巧緻な音楽が奏で上げられている。

ユニークな魅力を湛えているバルトーク集だと言えましょう。そのうえで、この時期のパーヴォ&N響のコンビの充実ぶりが窺える、聴き応え十分なバルトーク集だとも言いたい。