クレンペラー&フィルハーモニア管によるハイドンの≪時計≫を聴いて
クレンペラー&フィルハーモニア管によるハイドンの≪時計≫(1960年録音)を聴いてみました。
悠然としていて、恰幅の良いハイドン演奏であります。更に言えば、誠に風格豊か。
ハイドンならではの、親しみやすくて、機知に富んだ表情、といったものは薄いと言えそう。そう、大上段に構えながら音楽を奏で上げてゆく、といった演奏が繰り広げられています。それだけに、実に立派なハイドン演奏となっている。
一歩一歩、ジックリと踏みしめながら、歩みを進めてゆくかのよう。それだけに、有名な、時計の振り子を思わせる動きを伴っている第2楽章では、その振り子のリズムが、他での演奏以上にクッキリと浮かび上がっている。
それでいて、鈍重な演奏となっている訳ではなく、充分なる推進力を備えていて、力感が存分に感じられるものとなっている。のっぺりとしている訳ではなく、立体感が備わってもいる。そして、雄渾な演奏が繰り広げられている。派手さとは縁遠いながらも、底力を宿した輝かしさ、と言いたくなるようなものが感じられもする。とりわけ、最終楽章では、音楽の造りに対位法的な手法が取り入れられているということもあって、壮麗な音楽世界が広がっている。
そんなこんなにより、徹頭徹尾、充実を極めた音楽が鳴り響いています。
最晩年を迎える前の、気力の漲っている1960年頃のクレンペラーの体質がクッキリと刻まれている演奏。そのことによって、聴き応え十分で、独自の魅力を備えているハイドン演奏が繰り広げられている。そんなふうに言いたくなる演奏であります。