田部京子さん&ロペス=コボス&ローザンヌ室内管によるモーツァルトの≪ジュノム≫を聴いて

田部京子さん&ロペス=コボス&ローザンヌ室内管によるモーツァルトの≪ジュノム≫(1995年録音)を聴いてみました。
なんとも清冽な演奏となっています。無垢で、澄み切った音楽世界が広がっている。
田部さんによるピアノは、息遣いが伸びやかで自然。取り繕ったような表情は皆無であります。率直な音楽が奏で上げられている。頗る瑞々しくもある。そして、響きも、音楽が見せている佇まいも、実に美しい。その美しさは、頗るピュアなものでもある。
そのうえで、モーツァルトならではの飛翔感は十分。この作品に相応しく、典雅であり、適度に華やかであり、チャーミングな魅力を湛えたものとなってもいる。
しかも、モーツァルトの世界の中ではしゃぎ回っている訳では無く、思いのほか陰影が濃い。それは特に、第2楽章において顕著。更には、全楽章を通じて、繊細で、詩情味に溢れていて、しっとりとした音楽が鳴り響いている。情感豊かでもある。
1993年にデビュー盤を録音し、その2年後に制作された当盤は、田部さんにとっての初の協奏曲録音。田部さんの類稀なる音楽センスや、感受性の豊かさを、そこここから感じ取ることのできる演奏となっています。
ロペス=コボスの指揮もまた、キリッとしていて、凛としている。軽妙でもある。そのうえで、適度な劇性が感じられ、それがまた、この演奏に鮮やかなコントラストをもたらしてくれています。
聴いていて清々しい気分にさせられ、かつ、チャーミングな演奏。そして、聴き手の身体にス~っと沁み込んでくるような演奏となっている。
いやはや、なんとも素敵な演奏であります。





