ウェルザー=メスト&クリーヴランド管によるシューベルトのミサ曲第6番を聴いて
ウェルザー=メスト&クリーヴランド管によるシューベルトのミサ曲第6番(2023年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
メストは、現役の指揮者の中で、私が最も信頼を置いている指揮者の一人。
彼の実演に初めて接したのは、2001年にチューリヒ歌劇場で観た≪魔笛≫でありました。その演奏はと言いますと、詩情豊かで、躍動感に溢れていて、キリっとした表情を湛えたものとなっていた。なおかつ、音楽全体が実に有機的に纏め上げられていて、彼の音楽性の高さに驚愕したものでした。それ以来、私はメストに対して絶大なる信頼を寄せています。
さて、ここでの、2002年以来の手兵であるクリーヴランド管を指揮してのシューベルトのミサ曲でありますが、メストらしい清潔感に溢れたものとなっています。とても清々しくて、瑞々しくて、清涼感に満ちている。ひたむきで、純真で、澄み切った音楽が鳴り響いているとも言いたい。
贅肉は一切感じられず、キリッと引き締まったフォルムが示されています。音楽が粘るようなことが全くなく、スッキリとしている。そして、見通しがクッキリとしていて、頗るクリアでもある。
そのうえで、リリカルな情緒に満ちている。音楽が軽佻浮薄に流れるようなことは微塵もないものの、流れは頗る滑らか。そして、爽やかな歌心を湛えている。そのような演奏ぶりが、シューベルトの音楽に相応しい。
そのようなメストにとって、精緻なアンサンブルを土台にしながら、引き締まった音楽を奏で上げてゆくクリーヴランド管は、理想的なオーケストラであると思えてなりません。
メスト&クリーヴランド管の美質がクッキリと刻まれている、なんとも素敵なシューベルトのミサ曲であります。