マゼール&クリーヴランド管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫を聴いて
マゼール&クリーヴランド管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫(1977年録音)を聴いてみました。
キリっと引き締まった演奏であります。筋肉質でもある。オーケストラをガンガンに開放させて、絢爛豪華に奏で上げてゆく、といった演奏とは一線を画している≪シェエラザード≫だと言えましょう。
と言いつつも、オケの鳴りを抑えている、という訳ではありません。しかしながら、音楽を外に向かってエネルギーを放出させてゆくという音楽づくりを排している。むしろ、内側に向かってギュッと凝縮させてゆくような演奏ぶりとなっている。そのために、スリリングな音楽絵巻が展開されると言うよりは、ストイックな音楽世界が繰り広げてゆくような演奏となっているのです。しかも、とても純度が高くて、透明感のある世界が描かれている。凛とした美しさを湛えてもいる。幽玄であるとも形容できそうな、神秘性が感じられもする。
第1楽章や最終楽章からは、「透徹された熱狂」と呼びたくなる感興が備わっている。醒めているようで、理知的な熱さが感じられるのです。特に、最終楽章において、そのことは顕著。そして、中間の2つの楽章では、抒情性の高さに惹きつけられる。
これはもう、「才人」と評されていたマゼールの面目躍如たる演奏だと言いたい。
ユニークな魅力を持った、興味深い演奏であります。
なお、マゼールは、8年後の1985年には、ベルリン・フィルと同曲をセッション録音していますが、そちらでは、ベルリン・フィルならではの分厚い響きを生かしながら、壮大にして華麗な演奏を繰り広げてくれています。マゼールは、聴いてみないとどのような演奏を繰り広げているのか解らない(演奏内容の予想が付きにくい)という、一筋縄ではいかない指揮者だと看做しているのですが、そのことが如実に現れているとしか言いようがありません。