ベルティーニ&ケルン放送響によるマーラーの≪復活≫を聴いて
ベルティーニ&ケルン放送響によるマーラーの≪復活≫(1991年録音)を聴いてみました。
ベルティーニ&ケルン放送響のコンビは、1984年から1991年にかけてマーラーの交響曲全集を制作し、評判を呼びましたが、当盤はその中の1枚。
(なお、その全集に組み込まれている演奏のうち、数曲では、来日公演でのライヴ録音が採り入れられています。)
さて、ここでの演奏はと言いますと、明晰にして、鮮烈なものとなっています。
輪郭線が明瞭で、滑舌が良くて、目鼻立ちのクッキリとした彫りの深い顔をしている演奏。そんなふうにも言えるのではないでしょうか。客観性が高くて、スッキリとしていて、見通しが良くもある。そして、あまり粘着質ではない。
そのうえで、エネルギッシュでドラマティックな音楽づくりが為されている。キリッとしていつつ、輝かしく、メリハリが効いていてヴィヴィッドで、高揚感の高い演奏が繰り広げられているのであります。音の粒がクッキリとしていて、なおかつ、流れが滑らかでもある。
そんなこんなもあって、端正でありつつもスリリングであり、そのうえで、この交響曲の音楽世界に安心して身を浸すことのできる演奏となっています。しかも、仕上げは丹念。響きは引き締まっていて、そして、とても美しい。
独唱陣では、メゾ・ソプラノのクィヴァーの、艶やかでかつ深みのある声が、とても印象的。
知情のバランスに優れた快演。そのような表現が似つかわしいと思えます。
このコンビによるマーラー、一時期は、大いにもてはやされていたように思えますが、最近は、あまり話題に上らなくなっているのではないでしょうか。今一度、見直されても良いのではと思える、聴き応え十分な見事な演奏であります。