シュタルケル&スクロヴァチェフスキ&ロンドン響によるラロのチェロ協奏曲を聴いて
シュタルケル&スクロヴァチェフスキ&ロンドン響によるラロのチェロ協奏曲(1962年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
シュタルケルならではの、雄弁にして強靭な演奏となっています。演奏全体から意志の強さが感じられる。そのうえで、高潔で、孤高の音楽といった趣に満ちている。
更には、なんとも峻厳な演奏ぶりとなっていまして、外面的な要素は皆無と言え、凝縮度の極めて高い音楽が鳴り響いている。
そんなこんなもあって、襟元を正して演奏を聴く、そのような思いを抱かせる演奏だとも言えるのではないでしょうか。ある種、威圧感の漂う演奏だと言えるかもしれません。この辺りは、とりわけ第1楽章において顕著であり、それは、この楽章が元来持っている性格にも依りそう。
とは言うものの、決して聴き手を叩きのめすような演奏にはなっていません。凶暴な音楽になっている訳でもない。と言うよりも、あたかも、修験者を見詰めているかのような感覚に襲われ、敬虔な気持ちが湧き上がってくる。先に「孤高の音楽」と書きましたのも、このためであります。
しかも、技巧的にも間然するところがない。明晰にして闊達な演奏が展開されています。もっと言えば、自在感に満ちた音楽が奏で上げられることとなっている。
そんなこんなによって、この演奏に触れていると、自ずと音楽に没頭してしまうこととなる。そして、次第に頭(こうべ)が垂れてくる。
シュタルケルの偉大さが詰まっている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
なんとも見事な、そして、実に素晴らしい演奏であります。