アバド&ミラノ・スカラ座によるヴェルディの≪レクイエム≫を聴いて

今日はヴェルディの命日。ということで、アバド&ミラノ・スカラ座による≪レクイエム≫(1979,80年録音)を聴いてみました。
独唱陣は、リッチャレッリ(S)、ヴァーレット(MS)、ドミンゴ(T)、ギャウロフ(Bs)。

この音盤は、大分の高校に通っていた私が修学旅行で東京に行った時に、自由行動の時間に秋葉原の石丸電気に寄って購入した輸入盤LPになります。国内盤で購入すれば5,200円。輸入盤は4,000円くらいだったでしょうか。今から40年ほど前の話しであります。
そのときに初めて聴いて以来、当盤はヴェルレクの不動のマイベストであり続けています。

スカラ座のオーケストラとコーラスの威力は、ここでも絶大。とりわけコーラスの力強さと輝かしさには、惚れ惚れします。
壮麗さ、強靭で堅牢な響き、切れば血が噴き出すようなヴィヴィッドな生命力、迸り出る情熱、そして何よりも、燦然たる輝かしさ、それらが相まってこそヴェルディの音楽は生きてくると言えるのではないでしょうか。スカラ座には、それら全てが備わっている。とりわけ、この演奏でのスカラ座においては、それらの要素が最高度に発揮されている。そのように思えてなりません。
そのようなスカラ座をドライブしながら、雄渾でドラマティックで、しかも、しなやかで伸びやかな音楽を奏で上げてゆくアバドの巧みさも、実に見事。歌心や情熱に満ち溢れてもいます。見通しがくっきりとしていて、かつ、充実度がとても高い。
独唱陣も文句がありません。清澄なリッチャレッリ、深々としたヴァーレット、滑らかにして輝かしいドミンゴ。そのような中でも、滋味に溢れ、貫禄たっぷりで、深みのある美声を駆使しながら朗々と歌い抜いてゆくギャウロフは、殊のほか見事であります。

この作品の鼓動が、活き活きと刻まれている演奏。すなわち、ヴェルレクの神髄に触れることのできる演奏。そんなふうに言えると思える当盤。
私にとっての宝物の1組であります。