ストコフスキー&BBC響によるファリャの≪恋は魔術師≫を聴いて

ストコフスキー&BBC響によるファリャの≪恋は魔術師≫(1964年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ストコフスキーならではの、奔放で、痛快な演奏となっています。
概して速めのテンポが採られていて、疾駆感の強い音楽が奏で上げられている。その一方で、抒情的な曲調が施されている部分では、情緒連綿とした歌心が示されて、思い入れたっぷりな音楽が掻き鳴らされてゆく。かように、なんとも表現の幅の広い音楽づくりが為されています。そして、実に彩り鮮やかな音楽となっている。
そんなこんなによって、鮮烈であり、かつ、妖艶な音楽世界が広げってゆく。しかも、その様がわざとらしく思えないのは、作品との相性の良さ故なのでありましょう。そう、ここでのストコフスキーによる音楽づくりによって、この作品の魅力が存分に引き立っている。

終演後には、聴衆は湧きに湧いています。そのような反応が、至極当然に思える快演だと言いたい。ストコフスキーによる演奏には、「怪演」との烙印が押されることが多いように思えますが、この≪恋は魔術師≫は、「快演」と呼ぶに相応しいでしょう。
ストコフスキーの美質と作品の性格とが融合した、なんとも素敵な演奏であります。