クーベリック&バイエルン放送響によるマーラーの交響曲第5番を聴いて

クーベリック&バイエルン放送響によるマーラーの交響曲全集から第5番(1970年録音)を聴いてみました。

クーベリックによる多くの演奏で感じることなのですが、知情のバランスに優れている指揮者であると思っています。知的で理性的な演奏を繰り広げつつも、そこに、充分なる情熱が込められている演奏を繰り広げてくれることが多い。
このマーラーの5番も、まさにこのことが当てはまるように思えます。マーラーの音楽がしばしば見せる、情念的な様相は薄い。うねりも、あまり大きくない。それよりももっと、冷静で、整然としていて、統制の取れた音楽が奏で上げられています。端正であり、毅然とした佇まいをしてもいる。
と言いつつも、力感に乏しかったり、熱気が足りなかったりするかと言えば、さにあらず。構築性の高い演奏でありつつも、生気に溢れたものとなっています。そして、充実感タップリな音楽が鳴り響いている。シッカリとした昂揚感が築かれてもいる。
そのうえで、バイエルン放送響の性能の高さが、この演奏の仕上がりを、より一層克明なものにしてくれている。しかも、オケの響きは、ニュートラルでありながらも、芳醇でもある。

大人のマーラー演奏。しかも、やるべきことを、シッカリとやり尽くしている。そんなふうに言えるような、演奏なのではないでしょうか。
聴き応え十分で、確かな手応えの残る、なんとも素敵なマーラーであります。