ミュンシュ&ボストン響によるドビュッシーの≪海≫を聴いて
ミュンシュ&ボストン響によるドビュッシーの≪海≫(1956年録音)を聴いてみました。
骨太な筆致で描き上げられている、逞しい生命力を蔵した演奏が繰り広げられています。力感に溢れた演奏となっている。そして、スケールが大きい。
輪郭線がクッキリとしていて、曖昧なものが一切含まれていない演奏であるとも言えましょう。何もかもが、克明に描かれています。しかも、決して無機質な音楽となっておらず、全ての音が有機的に絡み合っているように思える。熱い血潮が漲っていて、かつ、音楽が豊かに息づいている。音楽が存分にうねってもいる。
そのようなミュンシュの音楽づくりに対して、ボストン響がまろやかな響きで応えてくれているのがまた、実に有難いところ。そして、こちらもまた、オケ全体が燃えに燃えてもいると言えそう。そして、合奏力の高さや、個々のソロの妙技が、この演奏に素敵な魅力を与えてくれている。
全体的に、とても熱くて逞しい音楽となっていつつも、ドビュッシーならではの色彩感の表出も見事。どちらかと言えば原色系に近いと言えそうな鮮明な色合いをしていますが、過度にケバケバしくはなく、精妙な色調の変化を楽しむことのできる演奏であると言いたい。
ミュンシュ&ボストン響のコンビならではの魅力に溢れているドビュッシー演奏。なんとも見事な、そして、頗る素敵な演奏であります。